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生命科学情報のいろは(1)
-「情報の質」-

 さまざまな科学情報があらゆる形で私たちに届けられます。しかし私たちには、それらがどれだけ信頼できる情報なのか分かりません。私たちは自分である程度の基準を持って判断する必要があります。

  「実験的証明」と「論文発表」が科学情報の信頼性の最低ラインの保証です。これが揃っていないものは、科学的な内容とは認められません。そして「第三者による追実験」によって内容が再現できて初めて、科学的に確かな内容であると認められます。

1.実験的証明
1)試験管内の実験
2)培養細胞での実験(樹立した細胞株・動物組織の初代培養細胞)
3)マウスなどの動物実験
4)ヒトの臨床試験
5)ヒトの疫学調査

2.論文発表
 実験や試験で証明したことは、論文発表して、客観性を保証されなければなりません。しかし論文を発表する専門誌や科学雑誌にも様々なレベルがあります。以下の項目は必要条件でしょう。
1)査読のある(peer-reviewed)論文誌であること
2)インパクトファクターのある程度高い論文誌であること   

 査読とは、編集部が投稿された論文をその分野の専門でキャリアのある研究者(2〜3名)に送って審査してもらうことで、審査に合格した論文だけがその雑誌に掲載されます。中には査読を行わない雑誌もありますし、査読が1人だけで行われている場合もありますし、また単に形式的におこなうだけの場合もあります。そのような内容は外部には分かりません。
 そこでインパクトファクターが参考になります。これは主に引用される頻度によってつけられるランキングで、だいたい下は0.5点くらいから、上は10点くらいまで(最高は40点くらいだが、10点を超えるのは非常に少ない)の点数で表されています。その論文誌の信頼度はだいたいこの点数に現れていると考えていいでしょう。もっとも、引用頻度は研究分野によって大きな差がありますので(人気のある研究分野は、研究者の数も論文数も多く、必然的に引用が多くなる)、一概にこの点数だけで評価できるものではありませんが、少なくとも2点以上は必要でしょう。
 *「学会発表」は判断の材料とはなりません。参加費、登録費を払えば、審査なしで誰でも発表はできるからです。また実験や調査を肩書きを持った人が監修していても、科学的に正しく行われたことの保証にはなりません。  

3.第三者による追実験
 あるレベル以上の論文誌に発表されている場合、その内容は客観的に信頼できそうだとは言えるのですが、本当に科学として“確立”されるには、第三者による実験内容の再現とその論文発表が必要です。もちろん完全な第三者ということですから、共同研究者や知人の研究室などでおこなったものは該当しません。その内容に関心をもって自発的におこなう研究者による追実験の発表が必要です。


非科学の実例
 マイナスイオンの健康効果。ひところはマイナスイオンの表示がなければ家電品は売れないという状況でした。マイナスイオンにはいろいろな説明はありますが、科学としての確立はおろか、まともに発表された論文すらありません。
 次に活性水素という物質。これは非科学の最たるもののひとつでしょう。活性酸素が悪玉だから、それに対抗するような名前を付けたに過ぎません。活性水素というものは存在しません。当然ヒトに対する効能の研究があるはずもありません。
 そしてバナジウム水。バナジウムという物質は生化学実験にも試薬として使われる物質で、確かにいろいろな作用はあります。しかし、実験で作用が現れる濃度は、一般に売られている水に含まれる濃度の千倍から一万倍くらいです。つまり全く土俵の違う実験事実をヒトのことのように宣伝しているにすぎません。
 このように私たちの周りにある一見科学的なものは、実はとんでもない非科学の上に成り立っている場合が少なくありません。
 理由は簡単で、科学という名前とちょっとした権威付けで人々を自由に操ることができるからです。

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