放射線科医・診療放射線技師の被ばく相談箱看護師の被ばく相談箱被ばく相談箱フロントページ参考図書お問い合わせ|
        
ご質問/ご相談内容 aa

当院では、放射線治療やIVRのような現実のリスクがある場合にはインフォームドコンセントをおこないますが、放射線検査に関してはおこなっていません。低線量の検査被ばくに本当にリスクがあるかどうかわからないからです。この場合にリスクがあると仮定して言うのは、インフォームドコンセントの意味がなくなるように思うのですが。本当に必要なのでしょうか。


回答/科学的根拠

回答:
放射線検査の場合もインフォームドコンセントは必要です。しかし、「被ばくリスク」を項目に含めるかどうかに関しては、科学的事実を的確に伝えることができるなら含めるべきですが、そうでない場合には含めないほうがいいでしょう。

詳しい説明:
インフォームドコンセントは、当該医療行為の目的、方法、内容、必要性、危険性、代替手段の有無、費用等を伝えて了承を得る手続きですが、現実には危険性に関する承諾を得るためにおこなわれると言ってもいいでしょう。したがって、放射線検査の場合も「被ばくによるがんリスク」を伝えなければなりません。
しかし、現在、100mGy以下の被ばくによるがんリスクの有無は、不明です(参照⇒)。伝えるべき「被ばくリスク」があるのかないのかわかりません。
* 通常の集団リスクとしては、原爆被爆者のデータから100mGy以下の被ばくリスクは不明であるといえます。しかし、医療被ばくの場合には個人のリスクですから、これは本来意味がありません。では、個人リスクとして100mGy以下の被ばくによるがんリスクはどうかと言えば、やはり不明なのです。したがって、いずれの場合にも不明であることは変わりありません(参照⇒) 

インフォームドコンセントの目的は、患者の「事実、真実を知る権利」の保障です。したがって、危険性がある場合には伝えなければならないのですが、低線量の検査被ばくの場合、”危険性がある”という事実はないのですから、リスクは伝える必要はない(リスクはないと言う意味ではありません)といえます。また、リスクは不明であると伝えることもできます。
”事実”を伝えるという意味では、ここまでが許容される範囲だと考えられます。これ以上、あるいはこれ以外に発展させた内容はいずれも事実の範囲を逸脱していることになるでしょう。
* 直線仮説的な仮定のもとに検査被ばくの危険性を誇張する意見、あるいは低線量被ばくはむしろ体に良いとする意見もありますが、事実を伝えるという意味では、大きく逸脱していると言えるでしょう。一つの仮説・考え方としては結構ですが、”事実”として人々に伝えるべきではないでしょう。

では、現実問題として、どう答えるべきでしょうか。
「伝えない」か、「不明であると伝える」かです。
不明であると伝える場合は、その科学的事実を解説する必要があります。しかし、現実には、インフォームドコンセントとしての情報伝達の中では不可能なことでしょう。
したがって、伝えない、つまりインフォームドコンセントには含めない、というのが現時点での合理的な結論になると思います。

なお、インフォームドコンセントはあくまでも事前(検査前)の手続きで、事前であることに本質的な意味があります。したがって、被ばくリスクを検査後に伝えたり解説したりするのは、インフォームドコンセントとは関係のない、被ばく相談というべきでしょう。

ffff


  
参考
「何か心配ですか?医療被ばく」第3章p73
<3|科学的事実に関する疑問を徹底解明しよう>
  
参考
低線量被ばくのサイエンス V.生物学的根拠
<個人の生物学的ながんリスクとは?>